- 💡 代表的な症状
- 1️⃣ 解剖学的要因(Anatomical Factors)
- 2️⃣ ITBS発生の主な理論
- 3️⃣ ITBSを引き起こす主なリスク要因
- 4️⃣ ITBSと関連する障害
- 1️⃣ 徒手検査
- 2️⃣ 画像診断(補助的手段)
- 1️⃣ 保存療法(First-line Treatment)
- 第1段階(0~2週間):炎症管理と可動域回復
- 第2段階(2~6週間):筋力強化とバランス改善
- 第3段階(6週間~3ヶ月):ランニング復帰
💡 代表的な症状
腸脛靭帯炎(Iliotibial Band Syndrome, ITBS)は、特にランナーやサイクリスト、登山者、バスケットボール選手など膝の屈伸を繰り返すスポーツをする人に多い障害です。以下の症状が特徴的です。
✅ 主要な症状
- 膝の外側(大腿骨外側顆付近)の鋭い痛み
- 特に ランニングやサイクリング 中に発生しやすい
- 階段を下りる動作 や 長時間の歩行 で悪化
- 膝の30°屈曲時 に最も痛みが強くなる(腸脛靭帯の圧迫がピークに達するため)
- 運動初期は痛みが軽いが、継続すると悪化
- 初めは運動後に軽い違和感がある程度
- 放置すると運動中や日常生活にも痛みが出現し、慢性化する可能性がある
- 腫れや圧痛(触れると痛む)
- 腸脛靭帯が大腿骨外側顆で摩擦を起こし炎症を引き起こす
- 触ると膝外側に腫れや硬結(しこり)が感じられる場合がある
- 「スナッピング」現象(腸脛靭帯の引っかかる感覚)
- 膝の曲げ伸ばし時に 「コツッ」「パチッ」といった音や違和感を感じる
- 腸脛靭帯が大腿骨外側顆をまたぐ動きにより発生
重症化した場合の症状
- 痛みが安静時にも持続(慢性化)
- 膝の可動域制限(膝を深く曲げられない)
- 痛みが大腿部や下腿部まで放散(広がる)する
- 膝関節の不安定感(膝が抜けるような感覚)
怪我のメカニズム(Mechanism of Injury)
ITBSの発症には、解剖学的要因(構造的要因)と機能的要因(動作の問題)が複雑に絡み合っています。
主な原因を以下に詳しく解説します。

1️⃣ 解剖学的要因(Anatomical Factors)
腸脛靭帯(Iliotibial Band, ITB)は、骨盤の腸骨稜(Iliac Crest)から始まり、大腿外側を走行し、脛骨のGerdy結節に付着する厚い結合組織の束です。
また、以下の筋肉と密接に関係しています:
- 大殿筋(Gluteus Maximus)
- 中殿筋(Gluteus Medius)
- 大腿筋膜張筋(Tensor Fasciae Latae, TFL)
特に大殿筋・中殿筋の機能低下があると、腸脛靭帯に過剰な張力がかかりやすくなります。
2️⃣ ITBS発生の主な理論
① 摩擦理論(Friction Theory)
- 腸脛靭帯が大腿骨外側顆を前後に擦れることで炎症を起こす
- 特に膝が約30°屈曲する際に摩擦が最大になる
- ランニングの着地時に毎回ストレスが加わるため、炎症が蓄積
② 圧迫理論(Compression Theory)
- 腸脛靭帯の下にある脂肪組織が圧迫されることが痛みの主因
- 高度に神経支配された脂肪パッドがあり、これが圧迫されると強い痛みを生じる
- ランナーがヒールストライク(かかと着地)をすると、圧迫が増加しやすい
最新の研究では、「摩擦」よりも「圧迫」の方が主要な原因ではないかと指摘されている。
3️⃣ ITBSを引き起こす主なリスク要因
動作・フォームの問題
- 股関節外転筋(中殿筋・大殿筋)の弱化
- 股関節が安定せず、膝が内側に倒れやすくなる(ニーイン)
- 腸脛靭帯の張力が増加し、膝外側の負担が増える
- オーバーストライド(歩幅が大きすぎる)
- ランニング時に着地の衝撃が増加し、腸脛靭帯に負担がかかる
- 過剰なヒールストライク(かかと着地)
- 足が地面に接触する際、腸脛靭帯が外側顆を強く圧迫
- 坂道・下り坂のランニング
- 下り坂では膝が軽く曲がった状態が長く続き、腸脛靭帯が長時間圧迫される
環境・装備の影響
- クッション性の低いシューズの使用
- 衝撃吸収が不十分で膝に負担がかかる
- 過度な**足部回内(オーバープロネーション)**が起こりやすくなる
- トレーニング量の急激な増加
- 短期間で走行距離を増やすと、腸脛靭帯にかかるストレスが急増
- 身体が適応する前に炎症が発生
- カンバー(道路の傾斜)の影響
- 片側が高くなっている道路(カンバー)を走ると、片脚の腸脛靭帯に負担が集中
4️⃣ ITBSと関連する障害
腸脛靭帯炎は、以下の障害と合併しやすい:
- 大腿筋膜張筋の過緊張
- 膝蓋大腿痛症候群(Patellofemoral Pain Syndrome, PFPS)
- 股関節インピンジメント
- 大腿四頭筋のアンバランス
- 足部の過回内(オーバープロネーション)
特にITBSは股関節の機能低下と密接に関連しており、単に膝だけの問題ではなく、全身のバイオメカニクスの乱れが影響する。
診断方法
ITBSの診断は主に臨床所見と徒手検査に基づきます。
1️⃣ 徒手検査
✅ Noble(ノーブル)テスト
- 患者を仰臥位にして膝を90°曲げた状態で大腿骨外側顆を圧迫しながら膝を伸ばす。
- 30°付近で痛みが発生すれば陽性。
✅ Ober(オーバー)テスト
- 患者を側臥位にして、股関節を伸展・外転させた後に受動的に内転させる。
- 腸脛靭帯が短縮している場合、大腿がスムーズに内転しない。
2️⃣ 画像診断(補助的手段)
- MRI:腸脛靭帯の肥厚や炎症を評価可能。
- 超音波:腸脛靭帯の滑走異常や炎症を確認。
治療法
1️⃣ 保存療法(First-line Treatment)
90%以上の患者は手術不要で回復可能。
✅ 急性期(発症直後~2週間)
- 休息(RICE療法):炎症軽減のため運動制限。
- アイシング(Cryotherapy):1日2-3回、15-20分。
- NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬):痛みが強い場合に使用。
- ストレッチ・マッサージ(Myofascial Release)
- フォームローラーで腸脛靭帯と大腿筋膜張筋をマッサージ。
✅ 亜急性期(2週間~6週間)
- 股関節外転筋強化トレーニング(中殿筋の強化)
- ランニングフォームの修正(歩幅を狭くし、ストライドを短くする)
- インソールやシューズの見直し(オーバープロネーション対策)
✅ 慢性期(6週間~3ヶ月)
- 段階的な運動復帰(平地から開始、坂道や長距離は後回し)
- ランニング前のダイナミックストレッチ
- 必要に応じて理学療法士によるフォーム改善指導
具体的なリハビリプラン
以下の3段階で進めるのが効果的です。
第1段階(0~2週間):炎症管理と可動域回復
目的:炎症を抑えながら、関節の動きを改善
✅ ストレッチ
- 腸脛靭帯ストレッチ(壁に手をつき、患側の脚を後ろへクロスさせる)
- 股関節外旋ストレッチ(仰向けで膝を抱え、対側の肩に引き寄せる)
✅ 筋膜リリース
- フォームローラーを使用し、腸脛靭帯・大腿筋膜張筋をほぐす(1回30秒×3セット)
✅ 軽い筋力トレーニング
- クラムシェル(Clamshell):10回×3セット
- ヒップブリッジ(Hip Bridge):10回×3セット
第2段階(2~6週間):筋力強化とバランス改善
目的:腸脛靭帯の負担を減らすための筋力強化
✅ 筋力トレーニング
- サイドレッグレイズ(片足を横に持ち上げる):10回×3セット
- ヒップアブダクション with バンド(ゴムバンドを使い横方向の負荷をかける):10回×3セット
✅ 動的バランストレーニング
- 片足スクワット:5回×3セット
- ラテラルウォーク(横歩き):10歩×3セット
✅ 修正ランニングドリル
- ステップ幅を短くする
- 足が着地する位置を調整(体の真下に着地)
第3段階(6週間~3ヶ月):ランニング復帰
目的:徐々に運動負荷を上げ、ランニングを再開
✅ ジョギング開始
- 最初の1週間は平坦な地面で軽いジョギング
- 週ごとに距離を10~20%増加
- 下り坂や長距離走は痛みがなくなってから
✅ フォームの最終チェック
- 鏡を見ながらランニングフォームを確認
- 必要ならランニングコーチや理学療法士の指導を受ける
まとめ
- ITBSは膝の外側の痛みを伴うオーバーユース障害。
- 股関節外転筋の弱さが原因の一つ。
- 診断は徒手検査(Noble, Ober)と症状で行う。
- 保存療法が基本で、90%以上は手術不要。
- リハビリは3段階(炎症管理 → 筋力強化 → ランニング復帰)。
早期治療と適切なリハビリが、ランナーの早期復帰を可能にします!








